「愛情漂流」出版記念イベント辻仁成さんサイン本お渡し会@文喫


昨日、六本木にある文喫で開かれた辻仁成さんの出版記念イベントに参加しました。

24日に出版される「愛情漂流」(竹書房)のサイン本お渡し会です。

 

辻仁成さんといえば、フランスで息子さんを男手一つで育てていることで知られています。

私の勝手なイメージでは「ミステリアスな人」だったので、
子どもを育てているという現実的な面があると知って、ますますミステリアスな人になっていました。

さて、辻仁成とはどんな人なのだろう?

この人が生み出す恋愛小説ってどんなものなんだろう?

そんな興味と好奇心だけ持って文喫に乗り込みました。

 

いざ文喫に参上すると、女性の参加者の多いこと……

鏡をチラチラ覗き込んでお化粧を直す人、
バッグの中からプレゼントと思しき包みを出す人、
何やらツイッターをチェックしているらしい人、
まるで恋人と待ち合わせ直前のような女性ばかり。

そわそわとした参加者たちの前に辻さん登場。

顔の小ささと、黒いスーツに包んだ身体の華奢な感じにびっくりしました。

毎朝走るのを日課にされているそうですが、
2・3日前に下り坂をランニング中にもともと不調だった足を痛めてしまったそう。

足を引きずっていると気力が落ちるらしく、
マイクを握りながらもご自分の声の小ささをしきりに気にされていました。

「ウィスキーを1本空けた翌日に走るもんじゃない」なんておっしゃっていましたが、
ウィスキーを飲みながらカミュやジャンジャックルソーの哲学書を読むのがお好きだそう。

けれど、ウィスキーを飲みながら哲学書を読むのは、
「並みの精神力じゃできないので、おススメしない」
とのこと。

なんでも、「死にたくなる」らしいです。

前に宇多田ヒカルさんもウィスキーを飲みながら哲学書を読んでいると言っていたような……
アーティストの人はウィスキーを飲みながら哲学書を読む人が多いんですかね?

今回出版される「愛情漂流」は担当編集者のタケモトさんから
「ど真ん中の恋愛小説を書きませんか?」
と、提案されたことがきっかけだそう。

担当編集者さんとはもともと飲み仲間で、
職業が「編集者」とは知らずに一緒に飲んでいたそうです。

「愛情漂流」というタイトルは
ミュージシャンのSUGIZOさんに提供した楽曲「感情漂流」のフレーズを気に入ってつけたそう。

執筆のためにパソコンを立ち上げるたびに
「今日も漂流しちゃうぞ」
と、思っていたそうです。

作品は1部と2部に分かれていますが、人称も、執筆中のスタンスも異なるそう。

1部は登場人物のモビルスーツを辻さんが着て動かす感じで、
2部は登場人物たちを俯瞰の視点から動かす感じだそう。

この違いや登場人物たちがどう漂流していくのか、
作品を読むのが楽しみです。

作品のタイトルにもある「愛情」について話が振られると、
「愛情という言葉は人間という言葉と同じで、範囲が広いからむずかしい」
と、おっしゃっていました。

息子さんへの接し方は辻さんがいなくても生きていけるように
「友達を大事にしろ」と言い聞かせているそうで、
「困っている時に助けに飛んできてくれる友達が3人いればなんとかなる」
と、おっしゃっていました。

息子さんの夢は片っ端から握りつぶしているそうで
本当にやりたいことだったら、握りつぶされても諦めないはず、と。

辻さんは息子さんのことを愛するからこそ
厳しさを教えていらっしゃるのだと思います。

そんな辻さん、近所の子どもたちからは
「ムッシュ・ジャポネ」と呼ばれて人気者だそうです。

ピクニックで食べ物を広げているところに
ロマという無国籍の子どもがやってきて
差し出した紙切れを目隠しにして盗みを働こうとした時も
その手を掴んでじっとその子の目を見つめて
「やっちゃだめだよ」とさとしたそうです。

その子が「そのコーラちょうだい」と言ったそうですが、
なんと辻さん、その子にコーラを差し出したそう。

これはそう簡単にはできないことだと思います。

盗みを働く子が近づいてきた時点で警戒したり威嚇したり
排除しようとする人が多いかと思います。

さとすところまではできたとしても、
その後、おねだりをされてそれに応じるということはなかなかできるものではない。

そこに辻さんという人の深さを感じました。

子どもとのかかわりのうえでは嘘はつけない、
純粋な子どもぐらいしか僕は信用できない、
僕も子どもだから……
なんて仰っていましたが、
辻さんは純粋であるがゆえに傷つくことも多くて、
けれどその傷ときちんと向き合って
ご自身なりの「愛」のあり様を
今も模索し続けている人なのかもしれない、と思いました。

辻さん、日枝神社の階段を上りながら過去を乗り越えることについて考えていて
「今、目の前のことを一生懸命にやること」
と、言葉が降ってきたそうです。

「未来がよくなれば、過去もよくなる」
ともおっしゃっていました。

「そんなアイドルじゃないんだから」
「僕ね、先生って呼ばれるのがイヤなの」
そう言いながら可愛らしい笑顔を見せてくださった辻さん。

このあと、辻さんの作品を読むのも楽しみですが、
これから辻さんが純粋さと深い愛をどう熟成させていくのか
今後の動向も気になります。